第3章 3部(裏有)
ニアの事、そしてシモンの事を聞いたのは翌朝だった。
「! 無事か!?」
新政府職員用の宿舎の一室。怒声と共に飛び込んできたけたたましい声。
力無く椅子に座り込む私に、その声は顔を上げさせる。
「…キタン」
キタンが真っ青な顔をして部屋に飛び込んできた。
「家が壊れたって聞いてよ、様子見に来たぜ。大丈夫か?」
皆心配してるぜ、と言ってキタンはドアの外を指差す。扉の外にはゾーシィやキッド、アイラックにジョーガン、バリンボーと勢揃いしていた。
「ダヤッカも、レイテとマッケンのヤツも心配してたぜ」
「…ありがとう」
「キヨウもお前に言ってたぜ。住むとこ無ければ家に来いってよ」
「うん、キヨウもキヤルも連絡くれた」
さすがに赤ちゃんが居る家にはお世話になる訳にはいかない、と私は笑って見せた。
怪我こそ無いものの、家が破壊され居場所が無くなった私は、ロシウの計らいで一先ず新政府にお世話になる事になった。
…ニアが人類を滅亡させると宣言し、シモンが逮捕されたという。
外では市民の暴動が続いている。市民の投げた石が当たったというロシウの額が痛々しかった。
情報が錯綜していて理解を超えていた。
そんな中、カミナ像が壊されたとも聞いた。
カミナシティの平和の象徴、カミナ像。
シモンが懸命に作った像は、シモンが、カミナが守りたかった人々によって引き倒された。
――カミナが。
壊されたカミナ像を思っても、私は泣けなかった。
「キタンさん、皆さん」
部屋の外でギンブレーの声が聞こえ、私は顔を上げた。
ギンブレーはロシウの部下としてこの事態に忙しく動いているようで、まだちゃんと話は出来ていなかった。
いや、私がレスキュー隊に保護され新政府に連れて来られた時にも顔を合わせたし、この部屋に案内してくれたのもギンブレーだ。
しかし私の方がとても話が出来る状況では無かった。
未だ肩を落とす私をギンブレーは心配そうに見て、それからキタン達に向き直る。
「ロシウ補佐官より伝言です。幹部の皆さんで市民の電話に対応して欲しいそうです」
「おう、分かった」
ギンブレーに返事をした大グレン団の彼らは、私に声を掛けてからぞろそろと去る。
ギンブレーも私に言葉を掛けようとしたようだが、虚ろな目をしたままの私の様子に言葉を飲み込み、一礼して去って行った。