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Invisible world【グレンラガン】

第3章 3部(裏有)




「っ…」
胸元でカミナの動揺した声が聞こえた。
「…いいから続けて」
抱きしめるという事にほんの少しの気恥ずかしさがあるが、それよりもカミナの想いが痛い。
カミナの頭に頬を載せ、私の動揺を悟られまいと話を促した。

「…誰も俺が見えない。つまり俺は見えない存在ってやつだろ? これって幽霊かやっぱ? 居るんだな幽霊って、なんて呑気な事を考えてた。」
軽口を叩いているがその時の彼の絶望は如何ほどだったであろうか。
私は震える唇を噛み締め声を我慢した。

「でもな」
カミナの口調が変わった。
放られたままだったカミナの腕が私の腰を抱く。
抱えられる格好に自分にの体がびくりとなるのが分かった。

「お前が来たんだよ」
私を上目遣いで見上げた、真剣な眼差し。
「……」
初めて見るカミナの目色に声が出なかった。

「…何日かそこでひっくり返って過ごした。空はいくら見てても飽きなかったからな。何回か空の色を繰り返した後、お前が来たんだ」
カミナが言葉を繰り返す。
「お前は俺を見つけて目をまんまるくした。駆け寄って来た。俺の名前を呼んだ」
「…カミナ」
「そうだ、その声でだ」
ようやく搾り出した震える声で名を呼ぶと、カミナが破顔した。
「その時の気持ちを、俺は一生忘れねェよ」

カミナが私の腕を取る。
強く抱きしめていたつもりの私の腕はカミナにあっさり解かれ、逆に抱きしめられた。

「置いて行かれなかった。俺は見つけて貰えたんだ、お前に」
耳元で囁かれ、所在無くなる私は恐る恐るカミナの背中に手を回した。風呂上りのカミナの肩甲骨が汗ばんでいる。
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