第4章 新たな生活
馬車が止まり、ようやく煌の禁城に着いたようだ。
ガチャリと馬車の扉が開くと、そこには自分の国とはまた違う大きな城がそびえ立っていた。どれくらいの広さなのだろうか、所々繊細な作りが施されていて美しさをも感じられた。
思わず見惚れてしまっていれば、すっと横から手が伸びる。
「段差があるから気をつけろ。」
「ありがとうございます…。」
どうやら自分がこのまま余所見して馬車から転げ落ちるのかと思われたらしい。
紅炎様がこんな紳士とは思わなかったわ…。もっとぶっきら棒な人だと思ってた。
噂に聞いていた紅炎という男の話と実際の姿に少し戸惑いはしたものの、ゆっくりと彼の大きな掌に自分の手を重ねればぐいっと力強く引っ張られる。
「うわっ!」
幸い転げずには済んだのだが、派手にバランスを崩してしまいば気づけば目の前が真っ暗になる。というより正確には、紅炎様のお腹に抱き付いてしまっていた。
驚きとはしたない娘だと思われたかもしれないという羞恥で顔を真っ赤にしたまま急いで離れれば、これでもかという程深いお辞儀を彼にする。
「ごめんなさい…っ!紅炎様。少しふらついてしまって……」
どうしよう、恥ずかしくて顔を上げられない…。煌に着いた途端こんな事をやらかしてしまうなんて…。
だが、オロオロとしていた私の頭に温かい彼の掌の温度を感じた。
「気にするな。」
たった一言だが、紅炎様の優しい一言にゆっくりと顔を上げる。
だが、既に紅炎様は先に行ってしまったようだ。このまま置いてかれては困ると彼の背中を必死に追いかけた。