第2章 物語の始まり
従者の言葉に耳を疑う。
え……どういう事。傘下に入るって…事はこの国はこれから煌帝国になってしまうの…?
頭が真っ白になり、気が遠くなりそうになる。未だに信じられないといった目で従者の顔を見つめ返しながらもゆっくりと口を開く。
「つまり…この国は煌帝国の物になるって…ことよね?」
ゆっくりと事実を確認する様に従者に問い返す。この国が煌帝国のものになるとしたら、王族である私や父はどうなるのだろうか。最悪処刑か…。
「その通りで御座います。本日の明朝、煌帝国の者たちがこの国を攻めてきまして圧倒的な武力の前に国王様はこの後決断をなさるしか国民を守る方法はなかったのです。」
従者が膝を折り必死に自分を理解させようと説明をしている。
まさか…。こんなに静かに攻め入るなんて。妙に城内も静まり返っている。いつもの朝はもっとバタバタとしている筈だ。相手はどんな武力を持って攻めてきたのだろうか。それだけでブルブルと身体の震えが止まらない。
「姫様…。お逃げください。もうこの国は煌帝国のもの。王族である貴方の存在が知られてしまっては大変です。さあ早く、この隠し扉から逃げて…!」
そう言って従者は部屋の扉の外にある壁を押すと今まである事さえ知らなかった扉が現れる。必死な彼の形相に早く行かなければという思いとこのまま逃げるという事は国民を見捨てる事では無いのかという思いが心の中で葛藤する。
だが、自分に躊躇する時間など既に残されてはいなかった。
「お前はこの国の第1王女、楊 桜に間違いないな。」
振り返ったその先には煌の旗を掲げた数人の兵を引き連れた赤髪にギラギラとした鋭い目、如何にもというその雰囲気を漂わせる男が立っていたのである。