第6章 歓迎会
「蘭蘡国は本日より我が煌帝国の傘下となった。そして、第一皇女、楊桜を練紅炎の妃として迎えることとなった。」
「え?」
(待って待って待って、今、紅炎様なんて言ったの?衝撃すぎて頭がついて行けない。だって…最初は皇女として引き取るとだけしか聞いていなかったはずだ。)
驚いた顔のまま紅炎の方を見るが、勿論のこと彼は何一つ動揺した素振りが無い。
その途端、広間中から割れんとする程大きな拍手と歓声が飛び交う。まるで自分だけが何も知らなかったみたいだ。
「こ、紅炎様…。これは、どういうことですか?私、何も聞いてません…。」
彼の言葉に抗議するように話しかけると、ようやく紅炎と目が合った。
「言った通りだ。今日からお前は俺の妻となる。もう決まったことだ。」
「でも、そんな大事なこと…何故前もって言ってくださらないのですか?」
「事前に言えば、お前は煌に来る話を引き受けなかっただろう?俺の話が理解出来たなら、黙って座っておけ。こんな所で悪目立ちはしたくは無いだろ。」
「……分かりました。」
紅炎の言葉に仕方ないといった様子で渋々立ち上がりかけた腰を椅子へと下ろす。言いたいことは山ほどあるが、紅炎の言う通りだ。自国を守る為、下手な真似はできない。恥晒しなど以ての外だ。
呆然としている間にも会はどんどんと進んでいき、目の前に美味しそうな食事が並べられたが、あれほど空腹だったにも関わらず、食欲は微塵も湧かなかった。
(まさか、こんなことになるなんて…。紅炎様と結婚だなんて、夢にも思っていなかった。勿論国を守る為なら、自分の身はどうなっても良いと思っていた。だが、自分の知らぬ内に話が進んでいたなんて。結婚だなんてまだまだ先のことだと思っていた。)
結局、会が終わるまで、紅炎とは一言も言葉を交わすことは無かった。その代わり紅炎の兄弟達が次々と挨拶に来てくれた為、動揺を隠すかのように笑顔を作り、挨拶を交わしていった。