第6章 歓迎会
「こちらでお待ち下さい。」
兵士にそう伝えられ、自分の背丈の何倍もの大きさがある門の前で待たされる。
(何だか、緊張してきた…。周りに知り合いは誰もいないし。紅炎様達はもう中でお待ちなのかな…。)
その時、高らかな兵士の声が大広間中に響き渡ると同時に門が開かれる。
「蘭蘡国第一王女、楊 桜様ー!」
門が開かれると何百人もの従者達が大広間の隅々まで座っており、真ん中にある最も高貴な椅子には紅炎が座っていた。その周囲には紅覇や紅玉などがニコニコと嬉しそうに笑みを浮かべて此方を見ていた。だが、あまりの圧倒的な光景にぽかんと間抜けな顔をしてしまう。
(歓迎会とはいえ…他国の、しかも支配下に置いた一国の王女に対するものとは思えない程の規模なんだけど…。怖い、逆に怖すぎる。)
雰囲気に圧倒されてその場に立ち尽くしていると、兵士がぼそりと「お進み下さい」と声をかける。その声にハッとすれば、恐る恐る前へと歩みを進めた。
何処に行けば良いかも分からない。こんな狼狽えた姿、父上が見たらさぞお怒りになるに違いない。ふと、上を見上げれば、紅炎の隣に空席の椅子があるのを見つけた。まさか彼処では無いだろうと思いつつ、兵士に誘導されるが儘進んだ先はその空席であった椅子だった。
紅炎と隣同士になるような場所に座るなんて、恐れ多いにもほどがある。チラッと横目で紅炎の方を見たが、目線すら合わない。しかも無表情。
(やっぱり、さっきのこと絶対怒ってる。何で怒らせたかは分からないけど、機嫌が良くないことだけは、幾ら鈍感でも分かる。これじゃあ、歓迎会どころではない。最早公開処刑だ。)
緊張と不安で顔を固くしながら、恐る恐る椅子へと腰掛ける。その途端、頭を下げていた従者達の顔が一斉にこちらを見る。そのギョッとした光景に肩が震えてしまった。
(ダメ、耐えられない…。一刻も早く終わらないかな…。部屋に引きこもりたい。)
その時、スッと隣に座っていた紅炎が立ち上がると、息を吸ったかと思えば大きな声で信じ難い言葉を口にした。