第5章 初めての朝
合図とともに、紅覇は空高く飛んだかと思えば、大きい刀を思い切り振り上げる。模擬戦とはいえ、あんな大きな刀、直に受けてしまえばまず力負けしてしまうだろう。
しかし、あの大きな刀を小柄な彼が扱うには必ず弱点があるはずだ。持ち前の身軽さを活かし、まずはその一太刀を避けながら、彼の動きを分析しようとしていた。
「へぇ、良く避けたね。やるじゃん。じゃあ、これはどう?」
単純な動きは、桜に通用しないと分かったのか、大きな刀で次々と連続で斬りかかり始める。小柄な彼の細腕のどこにそんな力があるのだろうか、と思うほどの動きに攻撃を避けることで精一杯になっていた。
「ほらほら!逃げてばかりじゃ、僕に勝てないよ?」
「・・・っ!ただ、避けてるわけではありません!私もやられっぱなしではないですから!」
その声と共に彼の一太刀を受け止める。
(重い…。でも、この力を利用すれば勝てる…!)
受け止めた彼の刀の刃に伝わる重みをそのまま利用して、己の刀を滑らせれば、あっという間に紅覇の間合いに入ることができた。
そのまま、彼の足に向かって回し蹴りをすれば、足場を取られた紅覇の体が宙に浮きそのまま地面へと倒される。
最後に紅覇の上へとのし掛かれば喉元へと刀を突き立てる。それと同時に紅玉の声が響いた。
「勝負あり!桜の勝ちよ!凄いわ、紅覇お兄様に勝つなんて!」