第5章 初めての朝
念の為チャーシャを抱き抱えたまま、部屋を出ると扉の前に立っていた見張りの人と目が合う。
やっぱ勝手に出歩いたらまずかったかな…。
「何処へ行かれるのです?」
「ちょっと城内を探検に…行こうかな……と。」
「でしたら、お供致します。」
「ど、どうも…。」
ああ……ですよね……。こんな見ず知らずの人を勝手にチョロチョロさせては困りますよね…。
監視付きではあるが、自由に回っては良いらしくとりあえず、昨日見かけて気になっていた鍛錬場でも行こうと向かった。
鍛錬場に着くと、そこには紅炎様と同じ様な赤髪の同い年くらいの男の子と女の子が剣を交えていた。
凄い……っ、とってもあの二人強い…。
見ているだけでも分かる。彼等からでる気迫に感心していては思わず魅入ってしまう。
夢中になっていたからか、後ろからあの人が来ている事にも気付かなかった。
「興味があるのか?」
「ちょっとだけ…って、紅炎様!」
声を掛けられたので振り返ると其処には昨日ぶりの紅炎様が立っていた。突然の事に狼狽えてしまった。
「気になるのなら見に行けばいい。彼処に居るのは俺の兄妹達だからな。」
え、紅炎様の弟君と妹君なのか……。通りで髪色が似てると思った。どうやら紅炎様は連れて行ってくれるらしく、急いで後ろをついて行く。
「紅覇、紅玉…ちょっと良いか。」
「紅炎お兄様っ?!」
「炎兄…?!珍しいじゃん、部屋から出てるなんて。」
紅炎様が呼びかけるとお二方は此方に来てくださった。
「紹介しよう、昨日から煌帝国の皇女として引き取る事になった蘭蘡国第一王女楊桜だ。仲良くしてやれ。」
「宜しくお願い致します、紅覇様、紅玉様。」