第5章 初めての朝
チュンチュンと小鳥のさえずりが聞こえてくる。パチリと目を覚ますと未だに見慣れないこの部屋の天井に、そうか…私は煌に来たのだと自覚する。
最悪…。昨日、着替えずに寝てしまったお陰で服は案の定クシャクシャになってしまっていた。
朝から溜息一つつきながら、他に着替える物は無いか周りを見渡す。この衣装棚には何か入っていないだろうかと開いてみると、真新しい服がギッシリと詰まっていた。
これ、着てもいいのかな…。大きさも問題なさそだし…。
一応自分の身体に当ててみたが、大丈夫そうだ。自分の国でも着替えくらいは手伝って貰わずにこなせたと思い着替えていると、どうやら煌の着物は少し着方が異なるらしい。
この紐…どこを結ぶんだろう。頭を抱えて悩んでいれば、扉の方からノック音と女性の声が聞こえた。
「失礼致します。桜様、お目覚めでしょうか。」
「はい!起きてます!」
急いで返事をすると、侍女の方達が数名部屋に入ってきた。着替えの途中だったからか少し驚いた様な顔をされるとそそくさと私の周りに集まってくる。
「着替えでしたら、私共が手伝いましたのに。」
「す、すみません…。」
結局、身体を拭いてもらい綺麗に着させてもらった。自国にいたときのような、桃色の可愛らしい着物だった。少し可愛らし過ぎるのでは無いかとは思ったが散々似合ってると侍女の皆さんに褒めて貰えたので良しとするか。
すると、朝食なのか机にどんどん美味しそうな食事が運ばれてくる。チャーシャのもあるみたい。そういや、昨日の夜から何も食べて無かった事に気付けば急にお腹が空いてきた。
「昨日、夕食をお持ちしたのですが、既にお休みになっていたようなので。少し多めに朝食をお持ち致しました。」
それは申し訳なかったなと少し反省しつつも食べきれるか分からない程テーブルに並べられた食べ物に思わず目を輝かせる。
「いただきます!」
手を合わせると、少しはしたないとは思ったがこの空腹には勝てなかった…。夢中で目の前の桃などの果物やパンにかぶりつく。
チャーシャも新鮮なお肉が食べられて嬉しそうだ。
余程お腹が空いていたのか、少し多いと思っていた食事は全て平らげてしまっていた。
流石に食べ過ぎた…。身体動かせないかな、なんて考えながら食器を下げてもらうと城を探検する為に身支度を始めた。
