第8章 夏風邪
次に目を覚ました時は夕方だった。
空がオレンジ色に染まってカラスが鳴いていた。
冬華が目を覚ました。今朝よりも身体が楽になり、回復したようだ。
そう思いながら起き上がると___
「……あれ、夏?」
夏が椅子に座りながら眠っていた。
ずっと自分のことを見てくれてたようだ。
冬華は微笑みながら夏を見つめる。
(髪の毛サラサラだし、綺麗な顔。)
そう思いながら見惚れていると____
「……んん」
目を覚ました夏と目が合った。
驚いた冬華は咄嗟に目を逸らした。
そんな様子を夏は気にせず___
「体調はどうだ。」
「うん、おかげさまでだいぶ楽になったよ。」
声が若干裏返りながらも答えた。
「そうか、少し待ってろ。」
そう言って少し部屋を外したがすぐ戻ってきて____
「ほら、食べろ」
そう言って差し出したのは鍋に入った手作りのおかゆだった。
「え?これ、夏がつくったの?」
「悪いが普段は作らないから、味は保証せん。」
「ううん、嬉しい、ありがとう、いただきます!」
そういえば今日はゼリーとポカリスエットしか食べていないためおなかが空いていた。
鍋からはたまご粥のいい香りがして余計に食欲がそそられた。
おかゆを一口含んだ、
パクッ
口の中に優しい味が広がった
「美味しい、、!すごく美味しい!」
そう言ってどんどんおかゆを口に運んでいった。
「…そうか」
夏はそう言うと無言で食事を見つめていた
そして鍋の中は空になり、完食した
「ごちそうさまでした。本当に美味しかった。ありがとう!洗い物は私がするね!」
そう言って起きあがろうとするがすぐに夏に鍋を取り上げられた。
「いや、いい。俺がするから、今日はこのままここで休め。いいな。」
「え…でも、流石にこれ以上は」
「いいから、完全に治るまでは休め、じゃあな。」
そう言って夏は部屋から出て行った。