第5章 孤独
私達は裏路地に着いてすぐに組み手を始めた。今までは相手がいなかったこともあり一人で功夫を積みつづけていたので二人でやるのはとても新鮮だった。夏は以前手合わせした時よりさらに上達していた。練習の様子を見てわかったことだが、彼はかなりの負けず嫌いらしい。彼をここまで強くしているはこの気持ちなのかもしれない。
「夏、また腕上げたね。」
「ッ……次は絶対負けん」
私は倒れた夏に手を貸したがその手を借りずに自力で立ち上がった。
私はふと気になった事を聞いた。
「ねぇ、なぜ夏はそこまで強くなろうとするの?」
少しの沈黙があってから
「……この世の覇者となり、他者を支配するためだ」
そう言うと夏は先に家に向かって歩いていった
その時に一瞬見えた彼の目はとても冷たかった。
(またあの悲しい目…)
彼は何かを一人で抱え込んでいる。冬華は彼の支えになりたいと思ったが、彼が自分を頼ってくるとは思えなかった。それでもーーー
(それでも一人は寂しいよ、夏。)
彼のことを放っておけない、そう思った。