第5章 孤独
「……いただきます」
そう言って食事に手をつけ始めた夏をみた冬華は
(意外だなぁ)
今までの夏の態度を見て、正直マナーを守るような人には見えなかったので驚いた。
その後夏は何も言わないが、箸を進めている。
(口に合わないわけではなさそう、よかった。)
冬華は安心した。
しばらく沈黙が続いたので冬華はずっと気になっていた事を聞いた。
「ねぇ、そういえば谷本くんの家族は何のお仕事をしているの?まだ1度もご挨拶できてないからさ、」
冬華がそう聞いた瞬間夏の手が止まった。
「父は死に母は警察に突き出した。その後に妹は病気で亡くした」
それを聞いた冬華はなぜ軽々しく聞いてしまったのだろうと後悔した。
夏はそれ以上家族の事を話すことはなかったが、今までの辛い過去が彼の心をここまで歪ませてしまったのだろうか、そう考えた冬華はひどく心を傷めた。