第3章 距離感
冬華が家に帰ると彼はちょうどリビングのソファで本を読んでいた。
この家で生活してわかったことは彼が部屋からなかなか出てこないこと、夜になるとふらっと姿を消すこと、キッチンを見る限りコンビニのゴミばかりで自炊をしていないことだ。冬華はどのように話しかければいいかわからなかったが奈々が言ったアドバイスを思い出した。
(会話以外の方法か……)
冬華はこの家に住み始めてからも自炊を続けている。彼を夜ご飯に誘おうと考えた。
そう考えた時彼はソファーから立ち上がってリビングから立ち去ろうとしていた。
冬華はつかさず話しかけた
「ーーーあの、谷本くん!」
そう話しかけると彼は歩くのをやめたがこちらを向くことはない。
「夜ご飯、私が作るから一緒に食べない?」
冬華がそう言うと彼はーーー