第1章 私の進む道
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『あ、アイスコーヒーで…』
勢いよくカフェに入ったものの、涙目の私に戸惑っている店員に申し訳なくて、すぐさま注文して席に着く。
いろいろ、整理しなくては…。
まず、三月は一織含めてちゃんと夢を掴んだ…?んだよね。
それが、「IDOLiSH7」という、グループ。
「あー!俺達が映ってるよ!」
「シー!声が大きいぞ、陸!」
「そうですよ!バレたらどーするんですか!」
後ろで何やらコソコソとしている男達が少し気になった。
チラっと見てみると帽子を深くかぶっていてよく分からないが、しきりに窓の外を指さして何か言っているようだ。
「お待たせしましたー」
先程注文した、アイスコーヒーが置かれた。
飲む気もなかったのだけど、一旦落ち着くにはいいかなと思い一口飲む。
「…お兄さんもアイスコーヒーにしようかな」
「おっさんさっき違うの言ってなかったか?」
「いやー、目の前に座ってる女の人がアイスコーヒー飲んでるの見て飲みたくなっただけだよ」
後ろでそんな会話されちゃ…
なんてすこーしだけ後ろに視線をやる。
「…あ」
『…あ』
一際深めに帽子をかぶって、マスクつけている人(多分おっさんって呼びかけた人)と目が合った。
…あれ、あの声…どこかで…
「…菜緒…?」
「…え?!」
そのマスクのお兄さんが私の名前を呼んだ。
正確には疑問形だったけど。
それに驚いた人が1人、立ち上がった。
『…え、なんで知って…』
「…覚えてねぇの…?俺だよ」
そう言ってマスクの彼は帽子とマスクを取る。
私はそれがスローモーションに見えてしまって、そして彼の顔を見た瞬間…あの、オレンジ色の髪色を見た瞬間…驚きで目が離せなかった。
『…三月…』
「お、覚えてんじゃん。」
「菜緒姉さんですか?!」
そう言って立ち上がった彼はあの頃より幾分も、大人になった一織がいて。
あぁ…なんて…なんて懐かしいんだろう。
面影はそのままで、こんなにも大きくなったんだ。
「久しぶりだな!元気にしてたか?連絡取れなくなって心配してたんだぞ?母さんは知ってたみたいだけど…」
『えっと…うん、大丈夫元気だよ。勉強が忙しくてね…』
「あ、紹介するよ、俺の幼なじみ。菜緒ってんだ」
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