第1章 私の進む道
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まぁこんなに悲観になってるけど、そんなに悲しいことばかりでもない。
法律を学ぶのは楽しいし、これで弁護士の資格を取れれば、大きな事務所に入ってまた経験を積むという勉強になるのだが、それもまた人生だ。楽しみで仕方ない。
「みてみて!アイドリッシュセブンだー!」
街中の交差点で、女子高生が一際大きな声を上げる。
私も驚いて彼女が指さした場所に目を向ける。
大きな建物の、大きなスクリーンに映し出された
「IDOLiSH7」というロゴ。
新人デビュー、と端の方に書かれていて、歌声が聴こえてきた。
『…歌、うまいなぁ』
オレンジ色の髪の彼は、特に歌が、ダンスが上手いってわけでもなかった。平々凡々といったところ。
でも、このアイドリッシュセブンのメインボーカルは、うまい。上手さが際立っている…。
まぁ、これからの新人なら、もっと人気が出るんだろうな。
なんて他人事に考えて、モニターに背を向けて歩き出した時だった。
"向かい風でも Yes, we go!"
『…?』
おかしい。
上手くもない、平々凡々の彼の声に似てる気がする。
立ち止まって、モニターを再度見てみる。
緑色や水色の髪をしたアイドルが順番に踊っていた。
やっぱり気のせいか…そう思ったけど、違った。
"心配ないのさ この歌が"
『…?!…三月…』
黄色の髪をした人と一緒に、変わらない、キラキラの笑顔で歌ってる彼がいた。
その次には、彼の弟も映し出されて…。
『…あぁ…夢が叶ったんだね…』
私は、無意識のうちに、涙が零れた。
もうずっと会えてなくて、最後に彼を見たのは、夢へ進む道からの試練にぶつかって、泣いていた彼だった。
だからこそなのか、それともまた別の何かなのか…
涙がポロポロと出てきてしまって、路上で大泣きするわけにもいかず、小走りに近くのカフェに入っていった
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