第3章 バーボン
おつまみも幾らか手に取って会計してもらう。
スイーツが途中とても眩しく目に映ったけど、今日は既にチョコケーキを食べたから我慢だ。
レジ袋を指先に引っ掛けて外に出れば、予想はしていたけど彼は私を待ってくれていた。
まさか帰りまで護衛みたいなことしてくれるの?凄い紳士……。
でも本当はめんどくさいけど、行きにやって帰りにやらないっていうのも中途半端だから仕方なくっていう線も捨てがたい。
「あの、別に帰りはいいですよ」
「そんなわけにはいきませんよ」
「いやいやいや。私いつも一人で帰ってますし、護身術的なのもできますから。迷惑でしょ?」
紳士的だとは思うけど、別にそれを有難いと思ってる訳でもないし。
むしろ往復させて気を遣うのはこっちなのを考えて欲しい。親切が相手のためになるとは限らないってやつ。
こっちとしては彼自身のことも考えて言ったつもりだったのに、反応は想像と違っていた。
私の手首を即座に捕まえると、コンビニの真横の真っ暗な所まで一気に連れていかれる。
視界が暗くなった一瞬で、体ごと包み込まれる感触と胸が硬い部分に押し付けられる感覚、この男の匂い……。色んな情報がすぐに脳で理解できないほどに与えられた。
袋のカサつく音が数秒遅れで聞こえてくる。
「そう簡単には離しませんよ」
気づけば私は、彼の腕の中にいた。彼の匂いに全身が包まれている。
耳で囁く声は低くて獰猛な獣のようで、私には酷く甘美な響きだった。
……今日はこの男とするのもいいかもしれない。
下手に親切な男よりも体を求める男の方が、やっぱり私にはあってる。何倍も魅力的だ。
そっと彼の下半身に手を伸ばして、まだ反応していないソコに手を這わせる。
ここまで来たら、止めない。
これを大きくさせて、奥まで欲しい。
「ねえ、何をくれる?」
「……とっておきの“ライ”があるんです」
これ以上ない家への誘い文句だと思った。
「ライ」を偶然口にする彼を、悪くないと感じてしまう。
ただの偶然が重なってるだけなのにーーー。
私を抱く男が、静かに瞳を開けて笑顔を見せていたことに私は気づくことが出来なかった。