第3章 バーボン
コンビニでバーボンを選んでいると、コンビニデザートを沢山カゴに入れた状態で彼はやってきた。
生クリームが乗ったケーキ系統のものばかり……。眩しすぎる…!
甘党だったとは意外だけど、なかなかいい趣味してるなと思う。
是非分けてもらいたいぐらいだ。
「ホォ……バーボンですか」
私の手の中を覗き込んで、顎に手を添える。
何を考えるポーズそれ。
彼もお酒を買うのか、腰を屈めながら視線を横の棚にずらす。
バーボン以外の種類のウイスキーも並ぶ棚を見つめている姿は、何か言いたげにも見えた。
「最近同じのばっかりだったのでたまにはいいかなって。嫌いなんですか?」
「いいえ、好きですよ。最近はバーボン一筋なぐらいですから」
そんなに美味しかったっけ?
あんまり覚えてないけれど、マイナーではないしファンがいても全然不思議ではないか。
どのバーボンを選ぶんだろうとさり気なく見ていると、彼はひとつのボトルのキャップ部分に人差し指を添えた。
………!
心臓が、音を立てたのが自分でもわかった。
平然とした表情の彼のとった行動が予想外で、動揺が隠せなかった。
「それなら僕は久しぶりにライを……」
「いいですね、ライ」
ただのお酒の名前を口にしてるだけっていうのはわかってるのに、まさかここまでドキッとするとは。
ライを手に取りレジに進む彼の後ろで、一度息を吐き出す。
私を驚かそうとしてるのかってぐらいタイミングが悪かった。
棚に残っている他のライに視線を移す……。
まだ沢山家にあるはずなのに、手に取りたくなってしまう。
ここまでくると、さすがにヤバいかもね。重病レベルだ。