第3章 バーボン
それでも自分のしたいようにするには、裏切りなんて付き物かもね。
どっちの敵味方になったつもりもないなんて言っても、その時々でどちらかの敵にはなってるわけだし。
「情報を流した奴を見つけるのは無理なの?」
「僕と貴女の情報力を持ってしてもNOCだとわかってないんだ。無理でしょうね」
「……情報を流したからって、NOCとは限らないんじゃない?」
「!」
だからNOCの可能性が100%ないってわかっている私でさえ、繋がっているって疑われた。
NOC以外で情報を流すからには、それだけ何らかの利益が当人に返ってくるはず。
お金……?
それとも組織への恨み?
もしくは、一番に疑われる人間に濡れ衣を着せるための……。
『知られたところで今更どうこうなる訳じゃないがな』
ジンの言葉を思い出した。
知られたところで構わないなら、情報を流した側は特に組織への裏切りを意図してやったわけじゃないのかもしれない。
「もしかしたら、あんたを消すためかもね」
「それは……困りますね」
「……!」
危機を感じながら、何故かバーボンの瞳が挑戦的に光る。
今までで一番、イイ顔してる……。
ニヤリと口角が上がりそうなのを抑えて何とか繕った。
実際はそうしようとしただけで、その笑顔を隠すことができていなかったかもしれない。
それまでに私は興奮を覚えていた。
「どうするの?」
「まだ何とも……。ですが、確実に生き抜いて…逆にヤツらを日本警察の前に引きずり出してやりますよ!」
間違ってなかった。
この男を差し出さなかった、私の選択は正しかったみたいだ。