第3章 バーボン
バーボンが生きるために一番手っ取り早いのは、ライみたいに組織から抜けてしまえばいい。
でもそれでは、安室透として彼が関わってきた人間を危険な目に晒すことになる。
ライと違ってバーボンは仮の姿で一般人と接しすぎていた……。
それに抜けたところで、組織は情報を掴んでいる男をそう簡単に逃がしはしない。
ライも……そうやって消された。
バーボンに目をやれば、何かに没頭するように一点だけを見つめて考え続けている。
たぶんこの男は、その考えなんて最初から候補にもあがってないんだろうな。
ここまで潜入して抜けたんじゃ、何の成果も得られずじまい。
何も報われないんだから。
「あんたがNOCと繋がってたっていう関係性は間違いないんだよね?」
「……?…実際彼がNOCだと僕は知っていましたが、彼は僕のことは知らなかったはずです。情報も僕の口からではありませんよ」
「違うの?」
「ええ。ですが、NOCと思わしい人物が僕しかいないから、貴女も僕を生かす策を思いつけずにいるんでしょう?事実がどうであれ状況は変わりません」
そうだ……。だから私は、ジンにバーボンが疑わしいと言われても言い返すことが出来なかった。
他のNOCを知っていたら、きっとそいつの名前を上げていたはず。……例えそいつにどんな無残な最期が訪れるとわかっていても。
バーボンを生かすのに必死だな、本当。いつもならこんなこと、一切口出ししないのに。
そういえば、一回だけあったっけ……。
今思い出しても、疑われてもおかしくないくらい必死だったな私。
それでもまだ信じてくれてるジンを、私は裏切ってるのか。