• テキストサイズ

刀剣乱舞/天朱

第2章 誘われた先は



「お兄ちゃんがいなくなって三日が経って…お父さんもお母さんもいつものことだってきいてくれなかったけど、あたしは、なんかいつもと違う気がして、なんか嫌な感じがして……だから、祠に、行ったの」
「祠!?一人で行くなって…!」
「だっ、だって!お兄ちゃんがもう帰って来ない気がしたんだもん!あたしの代わりに、本当に連れていかれたんじゃないかって…!」
剣幕に押されかけたが自分の思いを強く主張すると、悠青はひとまず口をつぐんで続きを待った。
「だから、あたし、祠で〝お願い〟したの。お兄ちゃんを返してください、あたしが必要ならあたしが行くからって…そしたら、光に包まれて、気づいたらここに…」
言い切ってから、怒られることを覚悟してちらと兄を見る。だが兄は、額に手を当てて大きくため息をついた。怒りを通り越して呆れているようである。
「…〝言霊〟がどれだけ重要か、わかっているな?」
「…はい」
「…わかっているなら、いい。今回はたまたま〝ここ〟で良かった……いや、いいのかはわからないが」
「え?」
兄がいるなら大丈夫なのではないだろうか、と真朱は目を瞬かせた。そういう問題ではないということは、あとで説明されることとなる。
状況がわかってきた頃、どたどたと少々慌ただしい様子でいくつかの足音が聞こえてきた。鶴丸国永がそちらを確認し、誰が駆けつけたのかを把握する。
「加州、光坊、伽羅坊、貞坊」
近侍である加州清光、鶴丸国永と共に〝伊達組〟と称される燭台切光忠、大倶利伽羅、太鼓鐘貞宗、そしてこんのすけだった。
「なんか変な感じと悠青の大声が聞こえてきたからさぁ。何事かなって」
「…なんでも、主の妹君が現れたらしいぜ?」
「へ?」
加州清光が間の抜けた声を漏らし、鶴丸国永が避けたスペースから物置の中を覗き込む。すぐに悠青の背があって、さらにそこに少女がいることが見て取れた。
「ほんとだ女の子だ…でもなんで?」
「根本的な理由はわからんが…なんでも〝神頼み〟をしたそうだ」
「あー…神頼みかぁ」
悠青の家系の話を聞きかじっている加州清光は、納得したように声を漏らした。
/ 9ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp