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刀剣乱舞/天朱

第2章 誘われた先は



金の瞳が、少女を射抜く。
敵意、警戒心、疑心、全てが込められた、冷たい瞳。真っ白の中で唯一光るその金色。
(こわい、けど、)

ー綺麗

そう同時に思ってしまったのは、彼の美麗たる容姿故か。身を縮こませて息が止まりそうになりながら、小さく呼吸を繰り返す。やがて、白き青年が真朱を見下ろしながら口を開いた。
「何者だ?ここには、女子がいるはずが無いんだが」
「あ…あたし、も…どうなってるのか、わから、なくて…」
問われた事に、声を震わせながら答える。しかし彼は眉間に皺を寄せただけで納得した様子は微塵も無い。当然と言えば、当然である。
「とっ、突然、光に包まれたと思ったら、気づいたら、ここにいたん、です…」
「……それを信じろって?」
「…あたしには、それしか、答えられません…」
射抜く金色を直視できず、視線を落とし、ぎゅっと膝を抱え込む。困惑と戸惑いと恐怖で、視界が滲みそうになったとき、部屋の外、廊下から足音が聞こえてきた。
「鶴丸、今ここに何か、」
「あぁ主、侵入者だぜ。〝俺達〟しかいないはずのこの本丸に、女人の侵入者だ」
「女人…?他本丸の審神者、では無くか?」
「さぁな。霊力は感じるが、俺には審神者とは思えないかな」
ぴたり、と真朱の動きが止まった。廊下からきこえる、青年と話す声。主と呼ばれた、男性の声。真朱はこの声に聞き覚えがありすぎて、聞き慣れすぎて、それはいつも身近にいた声で、おそるおそる、唇を震わせた。
「…おにい…ちゃん…?」
途端。
ガラッ、と半開きだった戸が開かれた。彼は、この本丸の審神者である天刃悠青は、少女の姿を視界に入れて、目を驚愕に見開いた。
「真朱…!?」
「お…お兄ちゃん…!!」
今まで動かなかった身体が、枷が外れたかのように弾き出されて彼の胸に飛び込む。ぎゅっと彼の服を握ると、優しく背中が撫でられた。その後ろで、真白き青年が目を瞬かせる。
「…知り合いかい?主」
「前に話したことがあるだろ。妹だ」
「…妹。なんでその妹君がここに」
「そうだ、お前、なんで」
ひっくと嗚咽を漏らしながら真朱が顔を上げる。涙を拭って深呼吸をし、彼女はこれまでの経緯を話し始めた。

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