第1章 彼女を2度愛したA
そろそろ仕事が終わる頃、子規ちゃんに連絡を入れるとすぐに行くと返信がきた。
一体何の話をされるのか、流石に別れ話ではないとは思うのだが朝からそわそわしていた。
急いで荷物をまとめてビルを飛び出すと彼女の車が停車していた。
「子規ち…」
「やぁやぁ敦くん、そんなに急いでどうしたんだい」
「あ、太宰さん」
「あそこに停まってる車で待ち合わせかい?」
「はい、その…この間話した…」
「彼女さんだね~お~い!」
「あ!そんな恥ずかしいことしないでください!」
「でも車から降りてきたよ?」
「え!?」
『太宰治さん…ですよね?ホントに包帯ぐるぐる巻きなんですね、敦くんから話は良く伺ってます』
「えぇ~??そうなの敦くん何だか恥ずかしいなぁ
それにしても綺麗な人だなぁ…僕と心中してくれませんか?」
「太宰さん!」
「冗談だよぉ」
『さ、敦くんそろそろ行きましょお店予約してるから』
「それじゃ太宰さんお先に失礼します!」
「は~い、お熱いねぇ」
車にのって30分経つが一向につく気配がしない。
それどころか繁華街に遠ざかっている。
「あの…子規ちゃん?」
『ごめんね敦くん、私嘘吐いちゃった』
「え?」
『ホントは予約なんてしてなかったの、早く二人きりになりたくて急かしちゃった』
「なんだそんなこと…」
『そろそろ着くわ』
車から降りるとそこは夜景スポットで有名な場所だった。
『敦くんと二人で見に行きたかったの、お腹すいたでしょ
はいこれ』
渡されたのはスープジャーとサランラップでくるまれたかしわ飯。
スープジャーの中身は熱い豚汁だった。
「美味しい、ホントに良いお嫁さんになれるよ」
『…じゃあしてよ』
「え?」
小声だったが確かに聞こえた。
『…そういえば大事な話があるって私言ったよね…』
「!」
ついにきた。
「うん」
次の言葉を待っていたが沈黙が続いた。
彼女の方に目をやると静かに大粒の涙を流してた。
「子規ちゃん!?大丈夫?」
『ごめ…ごめんなさい…、私を許して…』
「どうしたの?何かあったの?」
急な展開についていけずとにかく彼女を落ち着かせるのに必死になった。が
「はーいお二人ともそこまで」