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闇夜に紛れて鳴く不如帰

第1章 彼女を2度愛したA


手を振って否定する。

ああ、あまりの嬉しさに顔がニヤついてないだろうか。

『だから…マフィアに話をつけてほとぼりが冷めるまで隠れてるわ、時期が来たら会いに行くから…
待ってて』

「…子規ちゃんこっち向いて」

もぞっと動き、僕と顔を合わせてくれる。

愛しい愛しい僕の想い人はしばらくとはいえもう少しでいなくなる。

「君を愛してる」

しん…と静まり返り彼女は嬉しいような困った顔をした。

『やっと…言ってくれた』

私もと言って僕の胸に抱き付く姿はまるで子供のようで愛らしい。

互いの体温が心地よく、僕らは再び眠りに着いた。







それから休日の朝、目を覚ますと隣にいるはずの彼女がいなくなっていた。

すぐに飛び起きて狭い部屋中を探したが姿が見当たらない。

あったのは用意されていた朝食と書き置き、冷蔵庫に作りおきの何品ものおかず。

『すぐに帰ります、待っててください』

とだけ書いてあった。

「最後のお別れすら言わせてくれないのか…」

でも彼女の真意はわかっていた、このまま二人朝を迎えて別れるのはきっと涙にくれるだろう。

彼女は想い出を悲しみで終わらせたくなかったのだ。

お互い愛に満ち溢れたあの夜こそ、想い出に相応しかったのだ。

僕は箸を手に持ち、彼女の手作りを口にしたがいつもより塩味が濃いような気がした。

今だけは彼女のために泣いていたい。









夜、いつものバーでモスコミュールを片手に電話を掛ける。

『もしもし中原?今からそっちに用があるからすぐに向かう

私この仕事を降りるわ』


to be continued
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