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闇夜に紛れて鳴く不如帰

第1章 彼女を2度愛したA


「太宰さん…」

「ごめんね敦くんデート中にただ彼女さんに見覚えがあってねぇ」

『人違いじゃないんですか?私はあなたに会った覚えはありません』

「人違いなら堂々として呉れたまえ、私は知ってることをただ彼に話すまでさ」

「太宰さん…一体何を…
子規ちゃんが話そうとしてたことと関係が…?」


止めて


「彼女が何を話そうとしたのかはわからないが…いいかい、敦くん」


いやだ、敦くんには知られたくない。


『止めて』

「彼女は人殺しだ」

『止めろ!!!』

はぁはぁと息が荒くなる。

こんな形で彼に知られたくなかった。

「こんな形で敦くんに知られたくなかったって顔だね
まぁ良いさ、そんなに自分から話したいなら場所を変えて探偵社に戻ろう
その後にいくらでも敦くんに話したら良いさ夜はまだ長いのだから」

それから私は運転席に座り、探偵社へと向かった。

『それにしても良く私の正体がわかったわね』

「あっちの世界じゃ君は有名すぎるからね
ただ5年前に表向きには死んだことになってること
顔つきも大分変わったからすぐには気付けなかったけどね」

『…なるほどね、私もまさか覚えてる人間がいるとは思わなかったわ
完全に油断した…』

チラッと助手席に座る敦くんに目をやる。

こちらにはちっとも目を合わせようともしない。

…当然よね。





やがて探偵社に着くと冷たくて重い手枷をつけられた。

「悪く思わないでね、君は異能持ちとは聞いてるけど
知ってる人間は全員あの世行きだから情報が無いのだよねー」

『…殺すならさっさと殺してしまえば良い』

「悪いけど私は足を洗っていてね、そういう手荒なことはしたくないのさ
特に美人はね
それに…敦くんは君に聞きたいことがあるみたいだし?」

「!」

ここでやっと目が合う、がすぐに逸らされた。

『敦くん…私』

「すみません太宰さん二人だけにして貰えますか?」

「…りょーかい、はいこれ会社の鍵ね
私は近くで飲んでいるから何かあったらすぐに連絡しなさい」

「有難うございます」

やがてあの男の姿が見えなくなった頃、やっと敦くんから声をかけられた。

「行こっか…」

転ばないように優しく部屋まで導いてくれるがいつもの優しさとはやはり違かった。
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