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闇夜に紛れて鳴く不如帰

第1章 彼女を2度愛したA


僕は付いていたテレビを消して立ち上がり、彼女のすぐ隣に座る。

「子規ちゃん…」

『うん』

「ぼ、僕子規ちゃんと一緒にいるのがスゴく安心するっていうか
ホッとするっていうか…傍にいるのが当たり前で大事なこと言えなかった…」

恥ずかしいがここで想いを伝えるべく、彼女の手を握り真剣な眼差しで見つめる。

『…はい』

「僕はこんな気持ちになれたのは初めてで
5才も年が離れてて子規ちゃんに取ったら今までのどんな男の人より子供かもしれないけど」

『そんなの…いないよ私だって初めてだし…こんな年して恥ずかしいけど』

「えっ…」

しばらくの沈黙の間、お互い見つめあっていた。
顔を近づけると困ったような、でも拒否をするわけでもなくただジッと僕の顔を見ていた。

「好きです、僕を彼氏にしてください!」

言うや否や彼女の薄い唇が僕の唇へと重なった。
僕は目を閉じて彼女からのキスをただ受け止める。

やがて口惜しそうに唇が離れ、照れ隠しなのか彼女が僕の胸に顔を埋める。

『私だって…会ったときからずっと…!』

いつの間にか彼女の腕が僕の首に絡み付いてた。
それに応えるよう僕も彼女の頭をソッと優しく抱き締める。
幸せというのはこういうことを言うのだと全身で幸福を感じた。




付き合い初めてから一緒にご飯を食べるなどという口実が要らなくなった僕たちはしょっちゅう会うようになった。
ただどうしても僕の方が仕事によっては長引いたりするのだが彼女は僕の帰りをずっと待ってくれている。

「ありがとう、でもそんなに気を遣ってもらわなくても先にご飯済ませて良いからね?」

『ううん、一緒に食べた方が楽しいの
特に美味しそうに食べてくれる敦くんの顔を見るのがとても大好き』

「そんなに面白い顔してるかなぁ」

『可愛い顔ならしてるよ』

彼女と付き合ってわかったこと、彼女は正直で良く笑い無邪気な性格で初対面の時と比べてかなりイメージが変わったが
おそらくこっちがホントの子規ちゃんなんだ。

でもだからどうということもなく、むしろ彼氏の僕だからこそ彼女の一面が見れるのが嬉しいのだ。

しかし、そんな彼女の様子が時々変だったりする。

僕に何か言いたそうな顔をほんの一瞬なのだがしている。

どうしたのか聞いてみても適当にはぐらかされるのだ。
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