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闇夜に紛れて鳴く不如帰

第1章 彼女を2度愛したA


お言葉に甘えて部屋に上がり、リビングに通される。

『何か飲み物持ってきますね麦茶で良いですか?』

「あ、お構い無くぅ…」

やっぱり緊張する、男の部屋とは違う良い匂いがして
自分が異性の部屋に上がり込んでるのを意識してしまう。それも今日あったばかりの。

『お夕飯何か嫌いな食べ物とかあります?』

「全然大丈夫です!全部美味しく頂きます」

『良いですね、一杯食べる人は好きです』



しばらくして料理の匂いが鼻にまとわりつく。

『どうぞ、簡単なものですけど』

そう言ってしょうが焼き、鶏ガラで出汁をとったお吸い物、イカとキュウリの酢の物そして

「お茶漬けだぁ!だけどこの具は…?」

『具はなめろうを使ってます、お酒が好きでおつまみで作ったんですが余ってしまって…
時々余ったものをお茶漬けの具に使ってるんです』

「子規さん料理上手なんですね」

『そんな…ただ食べるのが大好きなのでこうやって食べたいものを作ってるんです』

あ、照れた。可愛いなぁ…。

『さっ!温かいうちに食べましょうか!
あと、今からお互い敬語を禁止にしませんか?
呼び方は慣れてないのでどうしてもさん付けになっちゃうんですけど
またこうやってご飯食べたりしたいですし…』

その言葉にドキリとしたまたなんてことは会ってくれるんだ…。
彼女も無意識に言ってしまったとはいえ自分が口に出した言葉にハッと理解したような顔をして恥ずかしそうに目線を下に向ける。

「そうで…だね!じゃあ頂きます」

何となく気まずい空気であったがそれが嘘のようにすぐ話が弾んだ。
話してわかったことは年齢は23才、そう遠くない職場で事務員をやってていつも定時で帰るそうだ。

「すごい…!やっぱりこれお店に出せるよ」

『やだなぁ、そんなに褒めたって何もでないよぉ』

そう言い終えるとジッと僕の顔を見つめてきた。

「何か顔についてる?」

『ううん、敦くんって綺麗な目の色をしてるなぁって』

「…そんなふうに言ってくれるのは子規さんくらいですよ」


自分が嫌いな僕は褒められるとなんだかお世辞のように感じてあまり好きではない。

でもこの人だと…

「アハハハ~やだなぁ!それこそ何も出ないですよ!」

照れ隠しで笑って誤魔化す、体も熱くなっていきグラスの麦茶を一気飲みする。

『ダメ!それは…』
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