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闇夜に紛れて鳴く不如帰

第1章 彼女を2度愛したA


彼女と初めて出会ったのは商店街の道端。

彼女が重たそうに抱える紙袋から転がしてしまった林檎を拾うのを手伝ったのが最初。

「大丈夫ですか?」

『すみません…』

「こんなに重いものを一人で?良かったら手伝います」

『そんな、悪いですよ』

「そんなことないですよ、丁度仕事が終わったところなんで直帰するとこだったんです
家に帰ってもすることもないんで笑」

『じゃあ…お願いします』

にこっと柔らかく微笑んだ、夕焼けに照らされた笑顔が綺麗だななんて見惚れてしまう。

『?あの…』

「あ!じゃあ行きましょう!」

『こっちです』

僕の社員寮と同じ方向だった。

「…」

『…』

自分から申し出たものの何の話をしたら良いのかわからない。

『えっと…お名前は』

「あ、中島敦です!」

緊張で声が少し裏返ってしまった、恥ずかしい…。

『じゃあ中島さんですね、私は正岡子規
子規で良いです』

「あ、そしたら僕も敦で…」

『敦さん…』

周りから普段下の名前で呼ばれるがこの人だと何だか恥ずかしいような照れてしまうような。

『顔が真っ赤ですよ』

「!」

『顔に出やすいんですね』

そう言って彼女はからかうようにニコッと無邪気に笑う。

それをきっかけに話が弾んだがあっという間に彼女の家へと着いてしまった。

そこはオートロックのマンションで防犯設備が整っていた。なるほど確かに一人暮らしの女性向けではある。しかもここ社員寮と徒歩10分もかからない。

「じゃあ僕はこれで」

『あ、あの』

「はい?」

『良かったらお夕飯…一緒にどうですか?
その、家に帰ってもすることないって言ってたので迷惑じゃなければ』

予想外の展開にポカンと口が開いたままになった。

『やっぱり迷惑ですよね…私最近越したばかりで友人もいない土地だから話し相手が欲しくて…
そしたら敦さんに声を掛けて貰えたのが嬉しくてその…』

「迷惑なんてそんな!じゃあご飯頂いちゃいます!」

そう言うとホッとした顔で僕を部屋に招いた。
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