第10章 ♢副兵士長♢
「リヒト!ちょっと手、痛いよ!」
「す、すみません!リアさん!すみません!」
リヒトに手を引かれるまま
エルヴィンの執務室を出たが
そのままグイグイ引っ張られる腕が
流石に痛くなった
「大丈夫だよ…どうしたの?」
「すみません…実は私、力や感情の加減と言うものにイマイチ疎くて…」
治療や手術なら大丈夫なのですが…と
申し訳なさそうにいうリヒトの頭を
思わずポンポンと撫でる
今まで接した事のないタイプのリヒトに少し動揺したが
何か事情があるような気がして
そのままリヒトを見つめていると
ポツ…ポツと俯きながら
自分の過去について話し始めた
孤児院出身だと言うこと
虐待をされていて病院に引き取られたこと
そこで医療について学んだこと
そして病院に居られなくなり訓練兵団に入ったこと
全てを話し終え顔を上げたリヒトは目を見開いた
リアがボロボロと涙を流していたのだ
「リア…さん?」
「リヒト…大変だったね…」
その言葉にリヒトは思わずリアに抱きついた
リアは驚いたがそのまま抱きしめ返し
「リヒト、話してくれてありがとう。私たちはもう家族だよ。あなたは一人じゃないからね」
そう声をかけると
リヒトの腕の力が強くなったのを感じた
「リア…さん、リアさんっ!」
リヒトは子どものようにリアに縋り付き
涙を流しながら名前を呼び続けた