第10章 ♢副兵士長♢
「リアがそんな風に私を見ていたとは、嬉しいな」
リアの言葉に柔らかい笑顔でそういうと
確かに、と話を続けた
「私は昔から、なにかと大人びていると言われていたな。所作や言葉遣いは教師だった父から教わった」
だった、という事は
エルヴィンのお父さんはもう…
「…エルヴィンの子ども時代が簡単に想像ついた」
お父さんについては触れず
今のエルヴィンがそのまま小さくなった姿を思い浮かべて
フフッと思わず笑った
「可愛げのない子どもだったと思うよ。…君は、昔から人懐こかったのだろうね?」
エルヴィンのその質問に首を横に振った
「私のお父さんはお医者さんで、昔から将来は医者になれって言われ続けてたの。勉強ばかりの毎日で人と触れ合う事もあまりなかったから、人懐こかったとは言えないかな」
「そうだったのか。…医者はこの世界でも優秀な一握りの人材のみなれるものだからな。君自身は、医者になりたかったのかい?」
うーん…と考えるリア
「最初のうちはなるのが当たり前なんだと思ってた。勉強していくうちに、人を助けることが出来る力を身に付けたいと思うようになった。…だけどおばあちゃんの牧場に行ってから馬が大好きになって、そしたら…自由を求めるようになってた」
将来、医者になったら
お金を貯めておばあちゃんの牧場を
私が継げればいいなと思ってたんだ
懐かしむように言うリアに
何か胸が熱くなる
この子は私が想像していたより
ずっと大人で芯の通った子だ
「リア、医者の仕事は嫌いでは無かったんだな?」
静かに相槌を打ち話を聞いていた
エルヴィンが急に口を開きいった言葉の
意図が分からず頭に?を浮かべながら
「うん。実習も何度も言ったけど人の怪我や病気を治すことには誇りを感じてた」
そういうと
満足そうに頷いたエルヴィンは
「リア、君には副兵士長の仕事としてもう一つ医療班の補助をしてもらおう」
そして人類が壁から解放された暁には
君に牧場をプレゼントしよう
調査兵団団長と言う権限でここに誓う
そう言ってエルヴィンは爽やかに笑った
リアの夢を全て叶えてくれるような話に
思わず目を見開き
「エルヴィン…ありがとう」
涙を流しながらお礼を言った