【ONE PIECE】RULER OF OCEAN
第3章 斧手のモーガン
その晩。
あいつは、夜遅くまで稽古していた。巻き藁が並び立つ屋外で、人知れず竹刀を打つ音と、気合いの声が響く。息を荒げながら、あいつは竹刀を構え直した。額、鼻、顎と、顔の凹凸を、満月が青白く染めあげている。玉のような汗が、滴い落ちる。
「ゾロ...」
あいつが、おれに気付いた。おれは、手に持った2本の刀の重みを、確かめるべく、強く握り締めた。
「くいな‼おれと真剣で勝負しろ!!!
真剣は持ってるだろう‼」
あいつの目が、おれの刀の方に向く。視線をおれの顔に戻すと、口角を上げた。
「私と?いいよ」
あいつの前に足を広げて立った。左手を前に、右手を肩の後ろに構える。おれに応えて、あいつも一本の刀を前に構える。シンプルな構えだ。夜風が吹いてきた。木が揺れる。広がった枝先をいっぺんに撫でられ、ふんだんに蓄えた木の葉が、幾千にも折り重なった音を奏でる。
風で浮いていたあいつの黒髪が、ゆっくり下りた。
「行くぞ」
「来い‼」