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【銀魂】 ねこの恋

第6章 桜吹雪の奥に見た背中(土方)


お手洗いからの帰り道。満開の桜に目を奪われた。さっきまで副長のことばかり考えていてあまり気にしていなかったけれど、こんなに綺麗だったなんて。時折吹く風に舞う花びらがひらひらと舞う。この仕事をしてから毎日が慌ただしく過ぎていく。こんなにゆっくり風景を見るなんて久しぶりだ。しばらくぼーっと桜を見ていたら、聞き慣れた声が降ってきた。

「オイ」
「あ、土方さん」
「あ、じゃねェよ。どこ行ってやがった」
「ちょっとお手洗いに」
「探しただろーが、早く戻るぞ」

土方さんはくるりと私に背を向けて歩き始める。私がいないのに気付いて探しに来てくれたんだろうか、なんて自分の都合のいいように解釈してしまって頬が緩む。視線を上へもっていくとふわふわと揺れる土方さんの黒髪に可愛らしい花びらがついていた。

「土方さん、ちょっと止まってください」
「何だ」
「しゃがんで貰っていいですか?」
「あ?」

何なんだという顔をする副長の肩をぐっと押さえてしゃがみこませ、髪についた花びらを取る。

「ついてました、これ」
「…おう」

いつもなら「自分で取れる」とか言いそうなところなのに、耳を赤くして私から目を逸らす。その反応がいつものこの人からは想像できなくて思わず笑ってしまった。

「何笑ってやがる」
「いえ、何でもないです」

ここに来るまでのもやもやした気持ちなんて、もう全部忘れていて。この人のこういう部分が見れるのは私だけなんだという事実が堪らなく嬉しい。


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