第5章 落ち着かない夜は狐と共に
加州「あ……主、良い匂いがする」
いきなり抱き付いて来ては、首筋に顔を埋めて来る加州。
主「わ、わわ!?お、お風呂入ったからね…」
加州「ねぇ、主…俺の事捨てたりしないよね?」
主「…!?する訳無いでしょ!こんなに可愛い加州の事、捨てられる訳無い!」
何処か寂しげに聞こえたその声に、私は思わず加州を抱き締め返していた。
加州「…主?」
主「だから、そんな泣きそうな顔しないの」
加州「…っ」
正直、加州がどんな顔をしているか…見えないし分からない。
あんな縋る様な声で問い掛けてくる加州が、今辛そうな事だけは分かった。
加州「ん…俺さ、主の事大好きだよ。本当、好き過ぎてこのまま離したくないもん」
主「ありがとう」
加州「だから添い寝、良いよね?」
主「ふふ、だーめ」
加州「あーあ、やっぱ駄目かぁ」
謀ろうとしてたのか…!?
加州「でも、すっごい嬉しかったよ。ほら亀甲、今日は自分の部屋戻るよ」
亀甲「ああ、ご主人様の放置プレイ…堪らないっ」
加州「…はいはい」
そう言って、加州が亀甲の首根っこを掴み連れ出してくれた。
主「私の心臓…もつかな?」
刀剣男士がこんなに綺麗でイケメンばっかりだなんて、聞いてない!!
嫌でも意識してしまう自分が居る。
刀だと念を押されても、人間にしか思えない。
大きく溜め息を吐いた時だった、ポンッという音と共にこんのすけが目の前に現れた。