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氷華血鎖【鳴門】

第38章 一部・残酷な未来


「行ってくる」

『…うん、行ってらっしゃい』



酷く安心する優しい声色。名残惜しいがあまりゆっくりもしてられない。そっと身体を離せば冷たい風が一気に体温を奪う。



『気を付けてね』



と照れ臭そうにはにかむチヅルにこれまた抑え難い欲が出て来て冷えた頬に手を添えて唇を寄せると一気にチヅルの頬に熱が集中する。



『っ!?』

「お熱いですねぇ」

「行くぞ鬼鮫」

「良いんですか?もう少し…」

「あまりやり過ぎるとチヅルが怒る」





※※※





『何よもう。アタシが怒らないの知ってるくせに』



と呟くチヅはイタチの背中が見えなくなってもその場に佇んで暫く皆が去っていった方向を眺めていた。



「………はぁ」



朝から相当堪えるモノを見た。先日二人で出掛けて行くところを見てから…否、それよりももっと前から二人がそんな関係になる事は薄々感じていた。だって二人には二人にしか分からない何かがあるのは分かっていたから。



「………、おーい!チヅー!」

『!ミツさん…』

「愉快な仲間達は仕事か?」

『うん、そうみたい』



金髪と赤髪の子供の滞在期間はおおよそ五日程度。イタチと鬼鮫のあんちゃんは三週間くらいの長期間滞在していただろう。



「寂しくなるな」

『仕事だから仕方無いよ』

「チヅの仕事は?」

『んー…アタシは年越す迄…後一ヶ月は休んどこうと思う』

「そっか」



未だにチヅが何を探してるのかは謎に包まれたまま。だがこないだイタチと一緒に村に戻って来てから少し余裕が出来た様に見える。見付かったのか…目星が付いたのか………それか全く違う何か。



「後で久々に稽古付けてくれよ」

『少しは成長したと期待しても良いのかな?』

「あたぼーよ!」





※※※





「「えー!!!もう皆居ないのぉ!?」」



まるで雷に打たれた衝撃の様な叫び声が庭から村に響く。それに対して"しーっ"と人差し指を口元に持って行けば両手で口を塞ぐ。



「何も言わずに行っちゃうなんて…」

「皆、急だね」

『二人に宜しくって言ってたよ』



そう伝えても弟妹の顔色は曇ったままで皆が居た時間が二人にとってとても有意義な時間だった事がよく分かる。
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