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氷華血鎖【鳴門】

第37章 一部・子守唄


『アタシが水の国出身なのは皆知ってるよね』

「「え!そうだったの?」」

『二人がまだ赤ちゃんの頃の話よ』



話に反応する双子に"あなた達の知らない話"と水を差さない様に釘を打って会話を続ける。



『水の国が島々から成ってるのは有名な話。アタシはその島々の中の一つの島の君主の出』

「それってつまり…お姫様!?」

『そんな大した者じゃない。まぁ幼い時から君主の座に就いたからそれだけの貯えはある。まぁ今じゃ無い島だけど』



無い、と言うより無くしたと言った方が正しいのだろうが。



『暁の協力者になる前は鉄の国で医者もしてたし、こう見えてアタシ芸者もしてるから、お金には困ってないのよ』



さらり、と言った衝撃的な言葉に箸を落としそうになって、デイダラはおかずを落として鬼鮫とサソリも唖然と目を見開く。



『あぁ、誤解しないで。芸は売っても身と心は売らぬが信条。それに情報収集に潜伏するにはとっておきの場所なのよ』

「姉様、げいしゃって何?」

『沢山の人の前でお筝や三味線を奏でるお仕事よ』

「姉様お筝上手だもんね!さっすがぁ!」



何も知らずにチヅルを尊敬する双子の目に何も言えずに居る俺達を見ると勝ち誇った様な笑みを浮かべる。



「ねぇ姉上、後で子守唄の代わりにお筝弾いて」

『良いよ』





※※※





「芸者って楽器奏でるだけじゃねぇだろ?舞も舞ったりするしお酌とかもするんじゃねぇの?そんな危険な事させて良いのか?」



と首を捻るデイダラにイタチさんは抑揚の無い言葉で答える。



「チヅルは強い。一般人なら論外、優秀な忍が多少束になったところで易々とモノに出来る女じゃない」

「そんなに強いのか?あの女神が?」



腑に落ちない表情で更に首を捻るデイダラをイタチさんは無視して湯煙でボヤける夜空を見上げる。この感じだとチヅルさんが芸者なのは存じていた様だ。まぁ情報収集がどうのとは言ってらしたしご兄弟の情報収集をしていたのだろう。



「芸者って言うとやっぱり…あんな格好すんのかな?ほーお………それはそれで良いぞ、うん」

「「………」」



何を想像したのか、うんうんと頷くのを見てイタチさんは声にならない溜息を吐いて温泉から出ようと立ち上がる。



「んぁ?その傷何だ?」
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