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氷華血鎖【鳴門】

第36章 一部・求めていたモノ


娼婦だったから愛されるのかと言う不安。だって男を籠絡するのに長けてる。そんな女、利用して当然だ。ましてやイタチさんには不覚にも記憶を見られて知られてしまっている。
彼が利用する様な人では無い事は初めから分かっていたけど例え夫婦になったとしても売女は愛されない。現にそれが理由で愛されず自害した人間も沢山知ってるし母様だってそれが理由でアタシの目の前で自害した。
だからアタシも同じ様に愛されないかもと思うと怖くて不安で絶望的で。でも彼の声は、言葉は、眼は…そんな億劫で固められた心を溶かしてくれる。



『不満なんて何一つ無い』

「!」

『貴方を愛してから少し臆病になったみたい』

「臆病?」

『でも大丈夫。ごちゃごちゃ考えるのは止める』



そう、ごちゃごちゃ考えてたって何も始まらない。こんなアタシの事を想ってくれてるイタチさんにちゃんと向き合わなくてはならない。



『ねぇイタチさん』

「!」



握る手の指先を絡めて胸に寄り添う。



『もっと…アタシを愛して』

「!!!待ったは聞けない…」

『言わない』





※※※





「今日は満月ですか」



一際大きい白銀色の満月。
双子とデイダラ、三人が川の字になって眠る姿を横目で見てから部屋の隅で傀儡の手入れに勤しむサソリに目をやる。



「テメェもお節介だな」

「焦れったい二人の為は勿論ですが双子の為ですよ」

「あの二人がくっつくのが双子の為?」

「チヅルさんが近頃村を空けてるのはご存知ですか?」

「何か珍しい薬草を探してるとかデイダラが言ってたな」



傀儡の手入れをする手を止めて思い出す様に窓から月を見上げる。



「それをミツさんが赤ん坊を運んで来るコウノトリを探してるって嘘を吐いて双子はそれを信じて止まないんですよ」

「あー…あの村の人間か」

「あの二人がくっつけば双子も喜ぶしミツさんの嘘も真になるので一石二鳥じゃないですか」

「………馬鹿馬鹿しい」





※※※





『すー…』

「少し…無理をさせたか…」



すぐ隣で疲れて眠るチヅルの髪の毛をそっと梳けば少し身動ぎして擦り寄って来る。あれだけ抱き尽くしても未だに収まらない熱を無理矢理理性で抑え込む努力をして思想で頭を抱える。



「………」



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