第35章 一部・旅行
口元に笑みを浮かべながら覗き込む様に俺を見上げる。相も変わらず宝石の様に綺麗な瞳はとても真っ直ぐで穢れを知らない。
『イタチさんはこれからどうしたい?この時間なら村に帰って休む事も可能だけど』
態とらしくチラつかせる鍵を奪って懐に仕舞うと目を丸くしながら瞬かせる。その姿にグッと来る何かを抑え込んで先を歩けば小さく笑いながら横に並ぶ。
『そう言えば湯の国の北海に有名な果物大福売ってるお店があってね』
「………」
『此処からだったら近いし行ってみたいなーって』
「そういう事を先に言え」
『御免って』
※※※
時刻は夕刻。部屋に運ばれて来た早めの夕食を頬張る双子は心底幸せそう。今頃あのお二人はどうしてるでしょうか…上手くやってると良いのですが。
「そう言えばサソリのおじちゃんってご飯食べてないけどいいの?」
「俺に寝食は必要無い」
「必要無いって事は食べなくても寝なくても平気って事?どうして?」
また説明の難しい事を聞く双子の目は穢れが無い。だからこそ本当の事を言うのは困難な訳で、そう考えるとこんなに好奇心旺盛な子供を真っ直ぐに育ててるチヅルさんは凄いと思う。まだ17歳と言う若過ぎる年齢で大したものです。
「サソリの旦那は特殊なんだよ」
「へぇー…」
「まぁ皆、人間離れしてるから驚かないけど」
そもそも貴方達のお姉さんが人間離れしてます、とも言えず双子を見やると口を開く。
「ペイン兄もあんなにピアスしてて痛くないのかなーとか」
「角都おじい様なんて90歳近いでしょ?凄くご高齢なのに若々しいし」
「デイダラなんて手にお口があるしね!」
「鬼鮫おじ様の大きな剣も生きてるみたいだし!」
「皆、変だよね」
「ねー!」
「「「………」」」
その変な事に一つも驚かない子供である双子の方が余っ程変なんですけどねぇ。そんな変な連中と仲良く出来る変わった性格もチヅルさん譲りなんでしょう。
※※※
『………』
なんてこった。時刻は陽の落ちた午の時間。楽しみにしていたフルーツ大福のお店はもう閉店の時間を過ぎていたみたいで買えずに終わった。まぁ別に明日帰る時に買えば良いんだけど。
-ガヤガヤ-
そんな訳で場所は宿付近の小料理屋。