第35章 一部・旅行
『全く…何を考えてるのかねぇ』
チヅルも何か意図がある事は感じ取ってる様で皆の小さくなる背中に向かってポツリと呟いた。
『アタシ達はどうする?』
「!」
『アタシ達もお出掛けでもする?』
「チヅルは…どうしたい?」
『そうねぇ…アタシは…』
まだ陽が真上まで昇ってない寒空を仰ぐ。
『折角だしアタシも少しお出掛けしたいかな』
※※※
事態は火急である。
いや、全然火急じゃないんだけど俺の中では物凄く火急なのだ。本日は土曜日で学校は休みなハズなのにチヅの家は有り得ないくらい静か。不審に思って庭の方に回って様子を伺ってみても人の気配が無いくらいに静か。休みの日じゃなくても双子の賑やかな声が聞こえて来るのに、しんと静まり返っている。
『あ、ミツさん。どうかした?』
「いや…どうかしたとかじゃなくてさ………?」
玄関から出て来たのはチヅとイタチ。あまり鍵がかけられる事の無い家に鍵をかけていた。
「あ、れ…?二人はこれから出掛けるのか?」
『うん』
「マツやトシ…他の皆は?」
『今朝早くに旅行行った』
旅行!?いやまぁそれはそれでいい。だが何故二人は残ってるんだん…否、家の戸締りをして後から合流なのか。
『アタシ達も出掛けてくるから何かあったら口寄せで呼んで…って言っても明日には戻って来るけど』
「お…おぅ………って待って。二人は皆と別行動?」
『そうだけど?』
何でチヅはこんなにしれっとしてるんだ?しかも戻って来るのは明日…つまり二人っきりで別の場所で一晩過ごすって事…だよな。つまりそれが意味するものは…
「え、あの…お二人はどういったご関係で?」
『「…」』
きょとんとした顔付きで二人は顔を見合わせる。
『好き同士だけど?』
す き ど う し !
…と言う事はつまり…えーとこの二人は…
「こ『じゃ、行ってくるね』チヅ!?」
あぁ行ってしまわれた。
自分の中ではこんな事になるのは多分結構前から分かってた。分かってたけど双方共に感情を表に出すタイプでは無いし口下手だから、割と早めのこんな展開は想定外だった。
「………でも」
思ってた以上に衝撃は小さい。