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氷華血鎖【鳴門】

第32章 一部・封印


「………そうかもな」

「おや。素直な貴方は珍しいですね」



まるで探る様な含みのある言い方にそれ以上は語らないと視線で訴え掛け再びチヅルを眺めていると着物の袖口から巻物を取り出しながら卓袱台の前に座り、机の上に巻物を広げる。



「何ですか、それは」

『封印の術式』

「封印…?」



そして帯の中から小さな赤い結晶の欠片を取り出して巻物の中央に置く。この結晶は…ユキトとシズルの居場所が入れ替わった時にシズルに刺さっていた棘の破片か。続いて取り出したのは扱いが難しそうなくらいに小さな注射器。その中には微量の血液が入っていて結晶の欠片に滴らせる。



「シズルの血か?」

『うん。戦闘中に採取した』



実際の戦闘現場は見てないが派手に殺り合ってた様に思う。その中できっちり血液の採取までしてるとは抜かりが無い。



『シズルに使った術は血縛呪って言って動きを拘束する呪い。あの結界の中でアタシの術を利用して傷口を修復したつもりなんだろうけど、それが大きな間違いで逆にアタシの血を取り込んだ事になる』



まさかそれを見越していたと。



『まぁ何らかのアタシの対策を講じるのは分かってたから。それを更に逆手に取っただけ』



そう言うと爪で手首を切って自らの血も滴らせながら膨大なチャクラを練り上げて片手で印を結ぶ。



『秘術・血鎖』





※※※





「これは…一体どうなっている」



遊郭での戦闘後、未だに目が覚めないシズルに異変が起きた。塞がってない傷口から勝手に血が溢れ出し鎖の形状に変化していきシズルの身体に巻き付く。その鎖を外そうと試みても武器も術も綺麗に弾かれる。



「ゔ…」

「シズル!」

「兄、者…」

「しっかりしろ、シズル!」



ギリギリと音を立ててシズルを締め付ける。このままじゃ絞め殺されるかも知れないと思ったら血で出来た鎖がシズルの身体に浸透する様に溶けて行く。



「ゔぐ…あぁぁああ!!!」



自らの胸を掻きむしる様にもがき苦しむと心臓の位置に血文字で"封"の文字が浮き上がり弾けて消える。



「ゔあ…」

「シズル!」



急いで身体の状態を確認してみるが鼓動も脈も正常で異常は何処にも見当たらない。血液を採取してみても何の変化も見られない。



「何らかの封印術ね」
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