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氷華血鎖【鳴門】

第32章 一部・封印


朝食の美味しそうな匂いに誘われて居間に行けば既に食卓を囲みながら新聞を読む鬼鮫おじ様とお茶を啜るイタチ兄様。そして台所に立つ姉様。何かこの光景も様になって来て、とても嬉しい。家族が増えたみたいな感じ。



「朝から精が出ますねぇ…今日も朝稽古して来たんですか?」

「もっちろん!だって僕は姉上より強くなるからね!」

『こーら調子に乗るな。アタシより強くなるなんて100年早い』



とトシを窘める姉様の顔色は帰って来た昨日より断然良くなってて少し目が腫れてるみたいだけど今までに無いくらいスッキリしていた。珍しく良く眠れたりしたのかなって思う。



「姉様、元気になったね」

『当たり前でしょー?アタシの調合した薬を飲めば一発よ』

「熱いお茶を一気飲みするくらい不味い薬だもんね」

『まぁーつぅー!』



ふと時計を見ると、そろそろ行かなきゃいけない時間で急いでご飯を食べる。



「「ご馳走様!行ってくる!」」

『待って、お弁当』



姉様からお弁当を受け取って居間を出て玄関で靴を履いていると鬼鮫のおじ様から声をかけられて手招きされたからトシと一緒に耳を寄せる。



「もしかすると…案外早くコウノトリが見付かるかも知れませんよ」

「「本当にっ!?」」

「まぁ…可能性の話で、お二人次第ですけどね」



二人次第?二人って誰だろう、って考えた瞬間に姉様とイタチ兄様が思い浮かんだ。そっか!イタチ兄様もコウノトリ探しに協力してくれてるんだ。なぁんだ、やっぱり二人は私が思ってる以上に仲良しなんだね。





※※※





洗い仕事をしてるチヅルを眺めてると鬼鮫が静かに居間に戻って来る。双子を見送ると言っていたが少し意味深に感じた。



『あ、鬼鮫さん!お見送り有難う』

「いえいえ、休憩させて貰ってる身なので出来る事はさせていただきますよ。ね、イタチさん」

「…そうだな」

『有難う』



現状と今までの流れから察するにチヅルはこの後シズルの血遁を封じる術式をやるのだろう。その後は村の住人達の健康状態を診て回ってまた家事をするのだろうと予想する。



「何か良い事でも有りましたか?」

「何故だ」

「いつも冷徹な貴方の目が…」



チヅルさんを見る時は穏やかで今日は更に穏やかですから、と含みのある言い方をする。
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