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氷華血鎖【鳴門】

第31章 一部・残された時間


もっとずっと先を見詰めてるイタチさんが病を治す事を望んで無いと言う事。その未来の為にどうにか時が経つまでは生き長らえたいと思っている事。それらが手に取る様に分かっているからアタシは何も出来ない、とても無力な人間だと実感する。



「後どのくらいの時間が残されてる?」

『三年…保てるか保てないか』



もしあの時アタシが秘術を使用してなかったら多分一年も保てなかったと思う。生命力を分け与える術だけどアタシ自身も恐らく短命だから、たった二年程しか伸ばせなかったのだろう。



『でも…症状はどんどん悪化していくだろうから…また状況は変わってくる…』

「そうか………チヅル、頼『いい』………」

『言わなくていい…どうして欲しいかも分かってるから』



耐え切れずに零れ落ちた涙は着物に染みを広げていく。





※※※





背中に触れる指先と声が震えていた。振り返ってみると唇をキツく引き結んで声を押し殺して泣いていた。蝋燭一本だけの僅かな灯りでも分かるくらいに涙で頬を濡らし着物に染みを作る。



『嫌い…皆、嫌い。お祖母様も母様もマツもトシも…そして貴方までアタシを置いて先に逝ってしまう。残される側がどれだけツラいか分かってない』

「嫌いで構わないから聞いてくれ。いつぞやに次に会ったら話がある、と言った事を覚えてるか?」

『!』



伝えようとしていた言葉は先日、チヅルに先を越された挙句、行動まで先を越された。だからこれ以上、先を越される訳にはいかない。



「俺が生きてる間だけでいい。俺が生きてる間だけ…チヅル、お前の人生を俺にくれ…ない、だろうか…」

『何を今更。アタシの全てをあげる、ってこの前言ったと思うけど?』

「嫌いな奴に?」

『違っ…それは言葉のあやで…』



目を伏せるチヅルの濡れた頬に手を滑らせて身を寄せる。



『あ、い…っ!?』



言葉を遮る様に唇を塞ぐ。



「チヅル、愛してる」

『!』




















→to be continued.
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