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氷華血鎖【鳴門】

第31章 一部・残された時間


「基本は白くて羽先が黒い鳥だ」

「「!」」

「そ、そうです!そんな鳥です!」



じろり、とチヅルの藤色の双眼が俺達を見る。



「だが赤ん坊を運んで…」

「「………」」



来る訳では無い。と真実を教えようとしたが思い止まる。信じ切ってる双子の純粋な目に真実を伝えるのは酷な気がした。



「赤ん坊を運んで来るコウノトリはとても珍しい」

「えー!そうなの!?」

「そんなに大変なんだ…」

『…二人共。話はそのくらいにしてそろそろ寝なさい。明日も学校でしょ』

「「えー…」」

『いつからそんなに悪い子になったのかな?』

「「おやすみなさーい」」



渋々、茶の間を後にする双子を見送ってチヅルが湯呑みを片付けながら、ポツリと呟く。



『ミツさん絶対いつかシメる』





※※※





弟妹に寝る様に促した後は鬼鮫さんも客室で休むと居間を出て行ったからイタチさんを連れて自室に行き診察をする。居間だと弟妹が起きて来る可能性があるから自室にしたんだけど…変な緊張感が自分の中にあった。



-すっ…-



医療忍術を施した手でイタチさんの背に触れ集中する。病を患っているのは先日、薬で確認済みだから一体どんな病を患っているのか。どんな治療が最適なのかを知る為に。



『………!』

「チヅル?」

『………どうして…もっと早くアタシのところに来てくれなかったの』

「………」



何となく…良くない気はしてた。あの薬で一瞬で回復したし兄弟と殺り合った時…天照を使用した時に吐血したし。リスクの高い術なのは知ってたけど吐血までするんだから余程だと感じていながらアタシは兄弟喧嘩に巻き込んで自分の体力が回復するまでって長引かせて。



「それは秘術の話では無いな」

『…アタシの術よ。完全で無い訳が無いでしょ』

「…だと思った」

『!』



座布団の上で胡座をかいたまま微動だにせず言う。



『今ならまだ間に合う。直ぐに手じゅ「チヅル」…』



優しい声色で名前を呼ばれて鼻の奥がツーンとする。イタチさんの背に触れる指先が震える。目を見てる訳じゃないのにイタチさんの思想が読めてしまって…それと同時に脳裏に浮かんだ絵が残酷過ぎて膝から崩れ落ちる様に畳に座り込む。



『分かってる…分かってる、けど…』
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