• テキストサイズ

氷華血鎖【鳴門】

第31章 一部・残された時間


「………」



大きな目で暫くチヅルを見た後に俺を見て、そしてまたチヅルを見る。



「姉さ、まっ…?」



そんなマツを見やってチヅルはマツの頭を撫でる。



『きっとアンタはアタシより良い医者になるだろうね』

「ほんと?」「ええっ!?またマツぅ!?」

『トシはきっとアタシより強くなるかも』

「ほんと!?」「それ有り得ないかもー」



確かに二人共、忍の才は充分にあるとは思う………がチヅルの話だと双子は多分…





※※※





「ふぅ…お腹いっぱい」

「もう食べられない」



と壁にもたれかかって膨れたお腹を摩る弟妹はウトウトしていた。食器などの片付けを終えて卓袱台に人数分のお茶を出して懐から先程調合した増血剤を瓶の中から取り出して二粒、掌に乗せる。



「姉様、貧血気味なの?」

「姉上が薬飲むなんて珍しい」

『ちょーっと疲れてるだけだよ』



心配そうにアタシの隣に寄り添って来る弟妹に笑顔を見せて増血剤を口に放り込んで勢い良く熱いお茶で流し込む。



『ゔ…』

一同「?」



物凄く酷い味に喉の奥が痒くなる。お茶で流し込んでもここまで味が酷いのはツラい。空になった湯呑みに急須でお茶を注いで再び流し込んで湯呑みを卓袱台に叩き付ける。



-ガンッ-



一同「………」

『これは死んだ方がマシってくらいの酷い味だわ…』

「そんなに大変なの?」

「コウノトリ探し」



ピシッ…と湯呑みに亀裂が入る。つい力が入り過ぎてしまった。



「「コウノトリ探し…?」」





※※※





「コウノトリ探し…とは?」

「ミツ兄が言ってたんだ!姉上は赤ちゃんを運ぶコウノトリを探してるって!」

「私達に妹か弟が出来るんだよ!楽しみだね!」

『………』



嬉々として語る双子に挟まれるチヅルは湯呑みの亀裂を撫でながら何とも言えない顔で音にならない溜息を吐いて頭を抱える。その様子からしてミツが双子を誤魔化す為に吐いた嘘なのだろうが、とても苦しい嘘だ。もっと他にいい嘘は無かったのだろうか。



「成程…コウノトリですか…これまた随分と大変なモノをお探しですねチヅルさん」

『………まぁね』

「鬼鮫おじちゃんはコウノトリを知ってるの?」

「えーとですね…」
/ 222ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp