第31章 一部・残された時間
納得いかない様な反論をするトシのほっぺたを抓って背の高い鬼鮫おじ様を見上げる。
「心配せずともお二人はマツさんが想像してる以上に仲良しですよ」
「本当?」
「ええ」
「どうして分かるの?」
「イタチさんの相棒ですから」
相棒だったら分かるのか。何か凄い。奥が深い。
※※※
『よし、出来た』
と数種類の小粒の錠剤をそれぞれの瓶に詰めて蓋を閉める。
『出来た………けど…』
深く溜息を吐いて肩を落とすと赤い錠剤だけを残して他の薬は薬棚に仕舞う。見るからにこの赤い薬が増血剤だと思うが…その薬を見ると顔を青くしながら、また溜息を吐く。
「…随分と嫌そうだな」
『即効性重視したから味がヤバいんだわ…イタチさんが飲んだやつより更にヤバい』
あの気絶しそうな程に苦く辛い薬の更に上を行く不味さだと。
『こりゃ食後だな…今飲んだら夕飯が食べれなくなる…と言うより夕飯すら作れなくなる』
「作れなく…?」
『あまりの不味さに副作用で気絶する』
「………」
『御免って冗談だって。まぁ副作用で熱出るし急激に血液が増幅するから身体がダルくなるかな』
確かに。急激に血液が失われるのは命が危険になるとは言われているが逆もまた然りだと思う。俺の場合も急激に血液が増幅したがチヅルの術だったからか副作用は何も無かった。そんな事を思い出してると一つの疑問が浮かんだ。
「逆に他人の血を取り込む事は出来ないのか?」
『あー…可能と言えば可能なんだけど…』
少々難しい顔をしながら歯切れの悪い言葉を紡ぐ。
『血液型問題がね…』
「血液型?」
『輸血する時って同じ血液型じゃないと駄目じゃない?あの秘術もその類なんだけど…唯一血液型が違っても他の血液型に輸血出来る血液型があるんだけど、その血液型は同じ血液型の血しか受け付けない』
とどのつまり与える事は出来ても貰う事は出来ない、と言う事か。
『その血液型ってのがO型でアタシなんだけど…うーん…最早同じO型からもアタシは血を貰う事出来ないかなぁ…』
何故だ、と問おうとしたところで勢い良く部屋の襖が開き双子が入って来る。
「姉上ただいまっ!お腹空いた!」
『はいはい』
「姉様、お薬作ってたの?」
『うん』