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氷華血鎖【鳴門】

第31章 一部・残された時間


庭とビニールハウスから薬草を採取した後、沢山の引き出しがある薬棚から動物の角や爪、魚の鱗などを引っ張り出して机に並べる。流暢にはしてられないから即効性重視の激不味な増血剤を調合する事にした。そりゃもう死んだ方がマシって思えるくらいの不味いやつ。粉末や液体状だったら絶対飲めない様なやつ。



「これは…動物の…」

『即効性を重視すると動物系が一番なんだよ…』



興味深くその様子を眺めるイタチさんは一歩後退って"まさか…"と言いた気にアタシと机に並べられた材料を交互に見る。
そう。先日イタチさんに飲ませた薬…って言っても健康体の人には毒薬のアレは動物系の毒も含んである。



『でも速攻だったでしょ?』

「………まぁ…そう、だな…」



歯切れの悪い相槌を打つイタチさん。そんな様子を無視して調合を開始すると、やはり興味深そうに眺める。



『イタチさんってさ…』

「?」

『弦の調整してる時もそうだったけど眺めるの好きだよね』

「………」



あれ、違ったかな?と思って視線を上げてイタチさんを見ると漆黒の双眼と目が合って僅かに優しく細められる。



「………そうかもな」





※※※





「見てマツ!鹿肉だ!」



と捕獲した鹿を引き摺ってやって来たトシを睨む。そんなに引き摺ったら汚れて捌くの大変になるって事を料理しない系男子は分からないから最低だ。



「猪はまだトシには無理だもんね」

「だって凶暴じゃん」

「ミツ兄と同じ事言ってる」



まぁミツ兄は鹿すらも捕獲出来ないけど。獣系なら鳥か兎しか捕獲出来ないチキンだけど。ついでに言うと私も猪の捕獲は怖くて出来ないけど。



「マツは何探してるの?」

「山菜。お野菜は大事だよ」



そう言えば鬼鮫おじ様が見えない。何処に行ったんだろう。



「私なら此処ですよ」

「うわ、大きい魚!」



しかももうちゃんと捌いてあるし。



「そろそろ暗くなって来ましたし戻りましょうか。時期的にも冷え込んできますし」



確かに暗くなってきたし、そろそろお腹も減ってきた。でもまだそんなに時間が経ってない。今戻って姉様達の邪魔にならないだろうか。仲良くする時間の邪魔にならないだろうか。



「マツさんは将来、素敵な女性になりますね」

「えぇ!?マツがぁ!?」
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