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氷華血鎖【鳴門】

第30章 一部・帰村


「私達…本当は今生きてないハズなの」

「………」

「でもね、姉様が少しでも長くっていつも頑張ってくれてるんだ」



延命治療って奴ですか。そんな芸当が出来る医者などなかなか居ない。成程…どおりで暁の皆さんが重宝する訳だ。



「そう言えば…あの時空感忍術はチヅルさんを口寄せする術ですよね?何故、イタチさんを逆口寄せさせたんですか?」

「んー…」



書物から目を離して宙を見ながら考える。



「二人にはもっと仲良くなって欲しいから私達は邪魔かなーってのもあるんだけど…」

「?」

「イタチ兄様、体調良くないみたいだったから」

「!」

「疲れてるっていうよりも…うーん…もっと急ぎな気がしたから、かな?」

「………」



説明にはなってませんが…あながち間違ってはいない。ここ最近のイタチさんは体調が優れない様でしたが大丈夫の一点張りでしたし、チヅルさんにしか話せない事もあるでしょう。



「マツさんは賢いですね」

「だって姉様の妹だもん!」





※※※





血遁には自らの血液が必要で、たった一滴でも強力な一撃になる。攻撃に必要な血液は一滴だとしても術を発動するにあたって流れてない血液もそれなり失われると言う。



「女性は経水があるから血液の量は男と比べて少ないし貧血気味な人も多く見られるから女性であるチヅル様が血遁を使うのは血液不足になりやすいからリスクが高いんだ」



未だ顔色が青いまま気を失うチヅルの頬に手を添えてみると頬がやけに冷たかった。



「妖刀も使ってたし君なんかの為に秘術まで使って最早、禁術のオンパレード。加えて毒の効力もまだ消えてないハズだから暫くは絶対安静」



命を削る妖刀に俺の傷まで癒す再生術。そして血液を増幅させる秘術。どれもハイリスクな術だとユキトは言う。



「あの秘術は血液増幅術じゃない。否、血液を増幅させてたが本来は生命力を分け与える術」

「!?」



"アタシの全てをあげる"
"貴方はアタシの事、信じてくれる?"
秘術の発動間際のチヅルの言葉が脳内で繰り返し再生される。



「………」

「………、弥生家を守る為にも本来は俺が受けたかった秘術を君なんかが受けたのは正直、癪だけど」
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