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氷華血鎖【鳴門】

第30章 一部・帰村


チヅルを殺したい訳じゃ無い。
そう言ったユキトはシズルを瓦礫の山から解放すると残りのチャクラで大きな怪我だけを応急処置する。



「殺したくないのであれば何故連れ去ろうとする」

「弥生家を守る為。弥生家の鏡魔眼はこの世の平和の為には必要な能力だ」



確かに記憶や思考を読める能力は大した力だし未来が見えるとなると最悪な事態を回避する事は可能だろう。その能力を悪しき者が知ってしまえば利用されかねない。



「恐らくチヅル様は最終段階…つまり未来が見えるところまで覚醒したと思われる」

「…その根拠は?」

「………」



じと、と恨めしそうな苛立たしそうな顔付きで俺を睨むと盛大に溜息を吐く。



「そこんとこの詳細はチヅル様本人から聞いてくれ」

「本人は知らないって言っていたが?」

「いや…多分もう本人が一番分かってる」



そう言うと弟の腕を自分の肩に回して立ち上がると首だけ此方に向ける。



「次会った時が…俺達の最期だろう」

「一つ聞きたい」

「………一つだけだぞ」



気になっていた事が一つだけあった。チヅルにとって血遁はリスクが高いと言う事。





※※※





この村で休ませてもらって三日目の夜。イタチさんやチヅルさんが村に帰って来る気配は無い。ゆっくり出来るのは良い事なのでしょうが…少々平和ボケしそうだ。



-ザッ-



夜の散歩を終えてチヅルさん宅に戻ると縁側の柱に背を預けて書物を読む妹君。随分と勉強熱心な子だと感心する。



「明日も学校なのでは?」

「あ、鬼鮫おじ様!うん…もうちょっとだけ…」



未だに書物から目を話そうとしない妹君の隣に腰掛けて読んでいる書物を覗き込むと手書きの医学書で子供の頭では到底理解出来ない様な事ばかりが書いてあり無論私は医学は専門外なので全く理解出来ない内容。



「これは?」

「姉様が書いた医学書」

「チヅルさんが?」

「この五~六年、姉様が私とトシを長生きさせる為に沢山の事を研究して記した書物」



長生きさせる為…?と言う事は………否、初めから何となく感じていた。この双子の極端に小さい生命力を。普通の子供の様に活発で元気ではあるが赤子の様に危うくか細い生命力。
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