第29章 一部・愛
「「晶、花…串刺の…術」」
-ガガガガガ-
この状態でまだ殺る気なのか。躱すのは間に合いそうに無い。
「須佐能乎」
※※※
ポタ、と生暖かい何かが頬に滑り落ちる。力を使い過ぎたせいか少しばかり意識を失ってたみたい。まだ自由が利かない身体を起こそうとすると、またポタポタと頬に生暖かい何かが降ってくる。
-ぬるっ-
『………』
これは…血?誰の血?
「ごほっ…チヅル…」
『イタチさ………!?』
右胸に刺さった赤い結晶。口元を抑える右手から滴る血。アタシの背を支える左手からはチャクラが流れて来る。
『イタチさん!!どうしてアタシ何かを…!』
「ごほっごほっ…」
『っ!』
飛び起きて周りを見ると周りは血遁の結晶だらけで、それを防ぐ様に骸骨みたいなものの中にアタシ達は居た。だけど一本だけ防ぐのが間に合わなくてイタチさんに刺さったと見える。
傷口を広げない様に慎重に結晶からイタチさんを引き抜くと傷口から血が溢れ出して骸骨が消える。
『このままじゃマズい…』
右肺が使えなくなってる挙句この出血量じゃ………
駄目。絶対に死なせない。イタチさんがチャクラを分けてくれたお陰で多少の術は使える。禁術だけど…アレをやるしかない。
※※※
ぞくり、と背筋が凍る。何だこのチャクラは。ボヤける視界を凝らして結晶の先を見るとチヅル様がイタチを抱き支えてチャクラを練っている様子が見える。
「くそっ…」
何故チャクラを練れる。あの綱手の弟子だとしても効力はまだ全然残ってるハズだ。なのに…
「………!」
相当の量のチャクラを練り込んでるせいか、まるで重力なんて関係無いかの様に髪の毛や着物の袖がふわふわと浮く。そして前髪で隠された額から覗く菱形の印。それが形を変えて刺青の様に顔や腕に浮き上がる。
『忍法・創造再生』
じゅう…と音を立てながら傷口が回復していく。チヅル様だけの傷じゃない。チヅル様が支えるイタチの右背の風穴も。否、これは回復じゃない。まるで再生だ。
「なん、だ………あの術は…兄者!」
「分かっている!」
このままじゃマズいと察知し伸し掛る瓦礫の山を退かそうと試みるが力が入らなくてどうにも出来ない。