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氷華血鎖【鳴門】

第24章 一部・獲物


そして誘う様に目が伏せられる。
心臓が嫌な音を立てながら騒ぎ立てる。駄目だ………この太夫とは関係を持っては駄目だと…知り合ってはならぬと頭の奥で警鐘が鳴る。だけどそれとは裏腹に…身体があの太夫を求めていた。俺はこの感覚に覚えがある。



「………っ」

「兄者?」

「あの太夫………色んな意味で危険だ」

「危険?いやまぁ確かにすんげぇエロいけど…」

「違う!そうじゃない!」

「えっ!?」

「あ…いや、違わないけど…」



多分、人生を狂わされる。こーゆー商売の申し子と言っても過言で無いくらいの天賦の才を持ってる。そしてそれはチヅル様を連想させ、その霧羽太夫の容姿はチヅル様の祖母の面影がある。



「なぁ兄者、俺行ってきていい?」

「やめとけ。絶対ハマる」

「じゃあ兄者がハマらない様に見てろよ。兄者はそーゆーの興味無ぇし」



だから寧ろ興味無いからこそ危ないんだって。違うのにその面影を見てしまったから余計に。





※※※





道中は正直しんどいから周りを見る余裕は無い。だけど一瞬だけこの目が捉えた二人の男の姿は獲物だった。アタシが餌を撒き続けて漸く餌に集まり出した獲物。まぁ見間違いが無ければの話だけど…見間違えるハズが無いし。撒いた餌に集まったのなら食い付いてもらう。



「え…舞台を一般にも?」

『ええ。たまには、ね…』

「そりゃ一見さんは喜ぶでしょうが…」



支配人の困惑をも丸め込んで、お筝の奏場を一見にも解放した。狙い通り獲物は食い付いた。見間違いでは無かった。奏でるお筝の音色に僅かなチャクラを練り面倒な人達を幻術にかけて獲物を更に誘った。



「百万両…初見の一見でそんな大金を…」



かなりの大金をかけられていた。これだったら皆を幻術にかける必要性は無かったかと思う。



『あんさん等、見たところ大名でも無し忍の上層部でも無し。旅人やろ?わっちなどにけったいな大金かけはりましたなぁ』

「それくらい賭けないと一見じゃあ会えないと聞いた」

「………」



シズルは意気揚々と盃を差し出すがユキト兄様はアタシと視線を合わせる事も無く俯いたまま口を固く閉ざす。落ち着け。まだ餌に食い付いたばかり。ここから釣り上げて陸に上げて…捌く。



『さて。わっちは芸達者』

「「………」」

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