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氷華血鎖【鳴門】

第23章 一部・策励


確か砂隠れに居る尾獣は一尾だったか。人柱力ってのはその名の通り人柱として尾獣を封印されてる人間の事。尾獣を抜かれた人柱力は死ぬ。所謂、運命共同体ってやつだろうけど酷なものだと思う。
暁は結構前から尾獣を探してるみたいだけど未だ所在が明らかになってない尾獣もいるみたいだし、まだ目立った動きはしてない。



「っとに…気味が悪いぜ」

『まあまあ…』

「ところで霧羽、そろそろ俺と寝てくれてもいんじゃね?」

『ふふふ、ご冗談を。芸は売っても身と心は売らぬが太夫でありんす』

「ちぇっ…まぁ皆、そーゆーところが好きなんだろうけどさ」



壁に立て掛けてあった三味線を手に取って音を刻む。



『さぁ旦那様。良い夢を』

「………ぐー…」



パタリと机に突っ伏して空になった盃を持ったまま寝息をたてる。その様子を特にどうこうするのでも無くただひたすらに音を刻む。





※※※





-シャン…-



「良い音色だな…三味線か?」



国の歓楽街を歩いてるところで何処からか音楽が聞こえて来て足を止める。落ち着く様な優しい音色。



「素敵な音色でっしゃろ?この国一番の太夫が奏でてはるん」



すれ違った芸妓が不意に話し掛けてくる。



「この国って言うか…五大国で一番ってとこやけどね」



五大国で…その言葉を聞いて思い出すのは昼間シズルが見せてくれた雑誌に載っていた太夫。シズルはと言うと既に何処かの見世に入って寛いでいるところだろう。



「どんな太夫なんだい?」

「絵画の様に美しく女神の様に優しい方ですぅ」

「へぇ…」

「ご興味御座いましたら次回お会いになるといいですよ」

「………次回?」

「この国に居はるんは今夜までで暫くは砂の国に来はらんと思います」



だから今夜は一見が会える隙は無いと言う。シズルも運が無い。もう少し見世を回ってたら忍び込んで一目は見れるかも知れないと言うのに。



「次はどの国へ行くのかご存知で?」

「いいえ。わっちなどの下位は知る事すら烏滸がましい」

「そうか。有難う」



偶然とは言え話を聞かせてくれた芸妓に小遣いを渡して、その場を離れる。一目くらい見ておくか、と屋根伝いに三味線の音が聞こえる方に向かう。



-スタッ-



此処か。
一際響く三味線の音。
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