第21章 一部・休息
だからチヅルはその転機を逃さず探し出してトドメをさす想定は出来る。何処に逃げたかは分からないから情報収集にまた村を空ける事だろう。
「俺達も何か探しているのは知っている。何をしているのか知っているのかと聞いたが情報収集しか無いのでは?」
「あ、いや…それは分かってんだけど…何か危ない事…してるんじゃないかって」
危ない…事?
「この村、二年前と少し変わったの気付かなかったか?」
言われてみれば久し振りに村に足を踏み入れた時、少し村の雰囲気が変わっていた。質素さが無くなったと言うか…家や村人の召し物が少し綺麗になったか。
「チヅの…お陰なんだ」
「チヅルの?」
「村を少し空けて戻って来た時とか…たまに…俺達が一生働いても買えない様な反物や陶器とか…持って帰って来て…お金にしてって皆に配ってくれて………普通…あんな高価な物なんて入手出来るハズがない」
ぽつりぽつりと話すミツをトシは藤色の瞳を瞬かせながら見詰め、ゆっくりとインを結ぶ。
「水遁・水喇叭」
「うおっ!?何しやがるトシ!」
「難しい顔してるミツ兄気持ち悪い」
「きもっ!?つーかこれ術じゃなくてお湯ぶっ掛けただけだろ!?」
「え?本当にやってもいいの?」
「………え?」
見てて、と嬉々として言うトシは先程より早く印を結んで、そしてその術をミツに当てる。
-ザバァッ-
「ほう…これはこれは…水遁でも初歩的な術ですが大した威力ですね」
「何をしてるんだか…」
その水遁の威力に柵に張り付け状態になってるのを黙って観察してたところでふと気付く。
「トシ、そろそろ止めろ。柵が壊れ…」
-ピシピシ…-
※※※
隣の男湯が騒がしい。確かおばさんはミツさんと来たって言ってたから、きっとトシとミツさん辺りが騒いでるのだろうと判断。ミツさんは少年の心忘れてない人だから普通にトシとも張り合っちゃうし。
-ピシピシ…-
『………?』
男湯と女湯を隔てる竹の柵に亀裂が入り、ジワジワと亀裂が広がって行く。咄嗟にマツとおばさんを自分の方に引き寄せて背中で庇う。その瞬間にパァンと破裂する様に柵が壊れて何かが女湯に沈む。
『「「………」」』
-ザパァッ-